2017年度設計系授業参考作品

*1年次設計演習授業

建築デザイン1・同演習(春・水3−4・1セメスター)

◎小沢朝江・加藤仁美・十亀昭人・伊藤喜彦・野口直人・番場俊宏・藤田大海・金子哲也・平本玲・森昌樹

小空間の設計

 身体に近い寸法を持つ単純な形態を複数回操作し、出来上がる形態や内部、外部空間の多様性を皆で共有することを第1の目的とする。また、各自が行った操作について、言葉で説明ができることを第2の目的とする。

 

■設計の内容

 1・外形寸法1800×1800×18000のチューブ状の形態に、何らかの操作を複数回加え、

   その内部・外部ともに使用できるものを想定する。

 2・模型の素材と厚み、着色は自由だが、必ず内部に空間があること。

   自らの設計に相応しい素材を考える。

 3・加えた操作の中で、優勢な操作の名前をサブ・キーワードとして挙げる。

 4・出来上がる空間や形態にキーワードをつける。

 5・どのように使用できるか、その機能を提案する。

建築デザイン2・同演習(秋・水3−4・2セメスター)

◎渡邉研司・加藤仁美・十亀昭人・伊藤喜彦・野口直人・番場俊宏・彦根明・井上玄・森屋隆洋・森昌樹

「コドモノイス」

 子供が使うことを想定し、目的、状況、場所を自らで設定し、

 そこで「座る」ことにふさわしい「イス」をデザインする。

 これまでの課題でも学んできた、スケールや身体寸法に注意し、

 自分が思い描く、新たな座るための道具としての「イス」を提案すること。

 

■デザインの条件
【形状】
 ・平面の形状が600㎜×600㎜の範囲とする
 ・形状は基本的に自由だが、座面を地面や台に置くことは禁止とする
【素材】
 ・紙を用いること(段ボール、紙管などの紙を加工して作られた材料も可)
 ・最低限の材料同士の接着、固定に紙以外の材料を用いることは可とする
【強度】
 ・自立すること
 ・子供が座って壊れないこと(提出物は、10㎏の重りを乗せて強度の確認を行う)

価値の転換                                      「コト」から生まれる「場」

「コト」=「展示と鑑賞」※ギャラリーのようなもの

 

 「コト」によって「場」のもつ価値が増幅するような提案を考えてもらいます。「コト」は「展示と鑑賞」とします。ギャラリーのようなものを想像してください。自ら「展示する作品」を選び、その作品にふさわしい展示と鑑賞ができる場を考えてください。作品はどんなものでも可とします。絵画でもいいし、彫刻でもいいし、物体でなくてもいいです。ただし、単に作品を展示して鑑賞することが可能な場をつくることが目的ではなく、提案する場所の特徴を活かし、その場所のもつ価値が増幅するような提案をしてください。
 提案の規模や方法はなんでもよいですが、その場所だからこそできることが望ましいです。

 

 ※トイレ、管理室などは必要なし
 ※屋根の有無は、展示する作品による
 ※規模は自由
 ※作品数は自由
 ※範囲内に点在していてもよしとする

*2年次設計演習授業

建築デザイン3・同演習(春・木3−4・3セメスター)

◎杉本洋文・山﨑俊裕・小沢朝江・野口直人・井上玄・白子秀隆・彦根明・山口紗由・明野岳司・山下貴成・森屋隆洋

「あいだ」をデザインする                                                            -学生と地域の人々が集まるリビング・ラボ-

 建築デザイン2の第4課題「価値の転換」では、キャンパス内にコトが起きる「場」を考えました。当課題では、キャンパスから半歩くらい外へ出てみます。場所はキャンパスの北側、交差点の角地です。大学の敷地ではないけれど、毎日皆さんが通るとても馴染みのある場所です。この辺りにさしかかれば、ほぼ大学の一部であるように感じることでしょう。しかし、隣にはさなだ幼稚園があり、周囲にはお店や住宅が立ち並んでいます。いわば大学と地域社会の「あいだ」になります。皆さん学生はもちろん、幼稚園の園児、その母親、お店の人、周囲に住む人々、様々な人が交差する場所です。
 一見、カテゴリーの違う人々を交わらないように配置することが良しとされる傾向にあります。しかし、想像力を働かせてみると、様々な属性の人々が集まることができる場や機会というのは、なにか新しい「コト」を生み出す可能性を秘めています。
 学生が専門分野を学んだ成果を地域の人々に知ってもらい、様々な意見をもらったり、学生と園児と母親がいっしょになって、工作のワークショップをしたり、料理店の店主を講師に招いて、学生や母親のための料理教室を開いたり、地域の人々がリクエストした本を大学の図書館からもってきて、気軽に立ち寄れるブックカフェにしたり・・・
 ただその場所を共有するようなゆるいコトでもいいかもしれませんが、「あいだ」だからこそ起きる化学反応によって、どんな「コト」が生まれるか具体的に想定し、「あいだ」をしっかりと空間化してデザインすることを考えてください。
 特定の人のためだけの場所ではなく、学生を含めたまちのみんなにとっての新しい居場所となる提案を期待しています。

 

■敷地条件
 敷地はキャンパス北側の交差点角地
■設計条件
 敷地面積:180㎡
 建ぺい率:60%(最大108㎡)
 容積率:100%(最大180㎡)
 要求面積:100㎡程度
 階数:自由
 構造:自由だが、必ず想定(木造・鉄骨・RC等)すること
 用途は自由だが、必ずキッチン・トイレ(男女兼用可)を設けること
 各自具体的に活動内容を設定し、それにふさわしい空間を提案すること
 外部に魅力的なオープンスペースを設けること

場所と暮らす住宅

古来、住居は自然から人間を守るシェルターとして生まれ、発展してきたといえるでしょう。人類はやがて農耕を発明し、定住社会になることで、長い年月をかけて地域固有の文化の土壌をつくってきました。日本では、戦後、高度経済成長以後、人口増加と都市化による住宅需要の拡大をベースにして、物流の発展とともに住宅の産業化が進みました。パッケージ化された商品としての住宅は、山を切り開き、海を埋め立てる造成を繰り返し、土地の魅力を殺すように発展してきたと言っても過言ではありません。人類の歴史から見れば、わずかな時間で風景は変わってしまったわけですが、人口減少社会に直面した今、このような我々のふるまいを再考する必要があるのかもしれません。
第二課題では、大学にほど近く、豊かな自然環境に囲まれた敷地に、住まう環境をデザインしてください。みなさんは各自敷地と周辺環境をじっくりと観察することで、敷地から見える景色、時間帯や季節によって変化を繰り返す太陽の動きや風の流れ、湿気や気温の分布や、草木や川から発せられる音などを体感し、自然環境と居住空間とのつながり方を考えてください。また、デザインする建築や環境がどのようにこの地域の風景として残していけるのかを考えてほしいと思います。
 
■敷地条件
 神奈川県平塚市南金目
敷地面積:389.17㎡
 延べ床面積:120㎡前後を要求(駐車場、屋外スペースは面積に含みません)
■建築条件
 構造:自由ですが、必ず想定してください(木造・S造・RC造など)
 階数:自由
 高さ:15m以下
■家族構成
 夫婦(30代)+子供(小学生)1人
  夫:平塚生まれ。ウィークデーは横浜で会社勤務。趣味はアウトドア、農作業
  妻:横浜生まれ。Webデザイナーとして主に在宅で働きながら家事も行う。趣味はアウトドア、絵画
  子:男の子。習い事は水泳とピアノ
  ※その他の具体的なイメージは、各自設定してください
■主要スペース
 ・リビング
 ・ダイニング
 ・キッチン
 ・ワークスペース
 ・ゲストルーム
 ・寝室
 ・水廻り
 ※駐車場は、敷地外に置くものとします。
 ※それぞれの部屋は独立しても、一体的に考えても良いです。
 ※その他必要だと思われる居室、収納、納屋などは適宜設定してください。
■その他
 ・既存の樹木や敷地の傾斜を活用してください。住宅のデザインのみならずランドスケープデザインも考慮し提案してください。
 ・建築主は背後の森林も所有しており、計画敷地と一体的なデザインをすることも可能です。
 ・建築主は敷地東側に隣接する農地も所有しており、親戚と共に農地の管理を行っています。

「差」の操作                              -都市に住まうということ-

 昨今では待機児童問題が取り上げられ、保育園や幼稚園のニーズが高まる一方で、東京都内のとある住宅街では近隣住民による反対運動の末に保育園が開園を断念するという事態が起こっている。都市ではたくさんの人々や建物が高密度に集まっているため、異なるモノ同士が共存しているという前提で物事を捉え、複雑な状況を受け入れた上でどのように都市と関わり環境を共生していくのかが重要だと言える。
 そう考えてみると、都市には多くの「差」があることに気づく。大きな視点で見れば、商業エリアと住居エリアには公私の「差」があり、住宅単体で見ると、敷地を区切る塀などによって境界としての物理的な「差」が存在している。また、朝・昼・夜などの時間的な「差」によっても都市の環境に影響があらわれる。この「差」を明確にするのか曖昧にするのか、活かすか無くすかで、都市との関わり方が変わってくるのではないだろうか。今課題では「差」が集積した都市において、そのコンテクストを読み解き、複合的なシチュエーションにおける住まいを設計する。
 敷地は雑貨屋やブティック、カフェやレストランが建ち並び、住宅やオフィスが適度に混ざり合う代官山の一角である。表通りは商業施設が連なり、人通りが多く、代官山ヒルサイドテラスやTSUTAYA T-SITEが至近距離にある。裏通りは路地に民家が密集していて、ひっそりとしている。ここに、多世代からなる4~6グループの住まいと、住人だけでなく地域の人々も利用できる交流スペースを想定し、様々な「差」に着目しながらそれらを操作することで、都市における新しい住まいの在り方を求めたい。

 

■設計条件
 敷地住所:東京都渋谷区猿楽町
 敷地面積:400㎡
 建ぺい率:60%(最大240㎡)
 容積率:200%(最大800㎡)
 要求面積:400㎡程度
 高さ制限:12m未満
 構造及び階数:自由
■要求諸室
 ・多世代からなる4~6グループの住居スペース
  (グループには単身も含めて良い。住人の構成や面積配分は自由に想定すること)
 ・地域の人々も利用できる交流スペース 100㎡程度
 ・広場
■その他
 ・操作する「差」を各自で設定すること。
 ・周辺環境に配慮した計画とすること。
 ・敷地内は通り抜けられるように計画すること。
 ・駐車場は設けなくても良い。

建築デザイン4・同演習(秋・木3−4・4セメスター)

◎吉松秀樹・渡邉研司・山﨑俊裕・河内一泰・白子秀隆・古見演良・山口紗由・山下貴成・納谷新・佐屋香織

カマクラ・スモールリノベーション 街を引き算・足し算するKAMAKURA small urban renovation designed by addition or reduction

 デザインという行為は「整理する」作業から始まる。それは条件を「整える」ことだったり、バラバラな要素を「揃える」ことだったりするが、 初期段階ではそれだけでデザインの方向が決まってしまうこともある。整えたり揃えたりするために何かを「削除」しなければならなくなる こともあるし、何かを「付加」する必要が発生することもある。
 デザインとは、基本的にこの「引き算」と「足し算」のバランスで成立している。これは、インテリア(内部空間)や建築(建築全体)に 限らず、街並みや都市全体をデザインする場合にも当てはまるだろう。規模が異なるとはいえ、デザインとはそれぞれの領域で「場」や「経験」 や「生活」などを描くことを目的とするからである。

 この課題は、鎌倉地域をサーベイ(調査)し、そこで発見した問題意識をもとに、これからの「カマクラ」をより魅力的にする一時的(仮設的) な建築提案を求めるものである。ただ、提案するものは、休憩スペース公園や駅前駐輪場・駐車場施設ではなく、また、建物の大幅な解体や 新築といった大規模な都市改良を求めてはいない。
 鎌倉は代表的な観光地としてのイメージが強いが、以下の4つの視点を考慮しながらサーヴェイを行ってほしい。

 

 1. 中世から続く歴史的な要素がそこかしこに見えがくれしている。
 2. 周囲を取り囲む丘陵地と海辺を繋ぐ道が、場所の多様性を生み出している。
 3. 湘南での生活を希望する新旧世代の住民がプライドを持って生活している。
 4. 民家の間を縫うように走る江ノ電は、鉄道沿線のスペースに種々の可能性を与えている。

 

 街をデザインするときに、そこに見えている現実(リアル)がはっきりしているので、無意識に「カタチ」を作ってしまう。だがデザイン には「目的(何のため)」や「対象(誰のため)」といった問題意識が必ずある。この課題ではサーベイやデザインの過程(スタディ)のなか で問題意識が見えてきたときに、このデザインは誰のためにあるのかを考えてほしい。それは「街の人(生活)」だったり「訪問者(観光)」だっ たり、あるいは「全ての人」かもしれない。「何となく考えている」ことを「それは何なのか?」とはっきり意識し、街を未来のカタチにして ほしい。そこで以下のプロセスを通して、自らの体験をもとにカタチにすることが求められている。
 
 Survey and Discovery(調査と問題の発見)→Analysis(分析)→Explicit(問題意識の顕在化)→Plan and Design(提案とデザイン)

 

 街のスキマを発見し、小さなリノベーション(更新)で、アクティビティー(行動)に変化をもたらしてほしい。ささやかなランドスケー プデザインや小さな建築やファサードの提案で、カマクラを少し変えてほしい。


■敷地条件 鎌倉の地図に明記された地域で各自場所を設定する
■建築条件 建築的・都市的提案であること
■建築面積 面積は特に規定しない
■施設内容 ・周辺環境との関わりに配慮した提案であること

       ・新しいアクティビティーが生まれるために必要な機能を有すること

What`s Public service ?  Kamakura Place           鎌倉市民のためのタウンセンター・観光客のための案内情報センター

公共の今
 建築においてパブリック(公共)は欠かせない概念の一つである。そして建物はプライベートとパブリッ クに分かれる。プライベートは、住宅.別荘など個人の住空間。パブリックは、官公庁.役所.警察署.駅.図書館.公民館. 体育館.学校… など。オフィス.商業施設など民間の建物はプライベートな面があるにせよパブリックとして認識されている。しかし、ファミレス.マック.スタバを私たちは、あえて公共とは思わない。にもかかわらず、若い学生はそこで勉強しているし、大人だって読書している。コンビニには、銀行.郵便.役所.情報送信などの機能が備わっている。 今、それらは有効な公共の場所になっているのだ。そして私たちは、今までの公共施設(役所.図書館.地区センター…) を利用しなくなっているし、必要を感じなくなっている。何故なのだろう?公共のカタチは、社会の状況変化に馴染むように変化を求められている。だからこそ、公共のサービスを見直す必要が あるし、求められているアクティビティを探さないといけない。「求めているもの」を「気持ちの良い場所」で受けられれば、再び人が公共の場所に集まるだろう。公共サービスは社会に不可欠なのだ。

 

観光ニッポンの今
 20年前、380万人であった訪日観光客数 inbound tourist(当時世界1位のフランスは4300万人) は特にこの10年で飛躍的に増進し2400万人に達している(現在.日本は世界16位.1位フランスは8300万人。日本 は2020年までに2000万人を目標にしていた)。SNSなどのメディアを通じ、世界の中でJapanは大きく注目されている。 今、日本は、昔のスキヤキ.さくら.mt.FUJI… ばかりでなく、アニメ.マンガ.アイドル.ガールズファッション.Jポッ プ.ストリートカルチャーなど若いニッポンの今、街並み.社寺.城など歴史遺産、郷土料理など日本の食文化、地方の風景や生活と、観光コンテンツは多岐に拡がっている。だが、それら観光客に的確な情報を提供レファレンスする施 設は整備されていないのが現状である。たとえスマフォやタブレットがあっても、みんなが集まれるインフォメーションの場所は求められている。

 

鎌倉の今
 観光客が増えている日本だが、鎌倉の観光客数はこの20年変わらず、年間800~840万人で横ばい推移 している。イメージが昔のまま変わらないからなのか?受け入れ側のインフラが未整備からなのか?いずれにせよ、 何かが不足欠落しているからである。今、鎌倉に観光情報施設整備は急務なことである。また、住環境としての鎌倉は、 代々継承し居住する住民、湘南の生活に憧れて移入してきた住民と、そのほとんどがここでの生活に誇りと満足を持っている。だからこそここでは、住民のための公共の場所が有効活用される施設となりえる。

 

アクティビティのカタチと建築の形
 今の君たちにとって、設計では、建築の形をスタディすることは面白いだろう。 それは間違っていない。建築の形は社会にダイレクトにメッセージを伝える有効な手段である。でもそれが、形そのものだけならば意味を成さない。建築はその中で人の行動があり、何らかのアクティビティがあるのだ。だからアクティビティを想定し、その大きさカタチをデザインしてほしい。それらが集まって建築のカタチになったら、社会にメッセー ジを伝えるものになるだろう。そのことをこの課題でトレーニングしてほしい。

 

第二課題
 上記テキストを考慮し、「What`s Public service ?」という問題の答えを提示する。その答えを元に、今の 鎌倉に不足や欠落していると感じたことや、「あったらいいな」と思われるものを計画し、国内外を問わず人が来たくなるパブリックサービスがある建物と広場をデザインする。

 

■敷地条件 神奈川県鎌倉市由比ガ浜 1655㎡
      近隣商業地域 (準防火地域)・建ぺい率 80%・容積率 300% 
      (敷地には微妙な高低差があるが平坦とする)
■建築条件 構造.自由・階数.2層以上
      (1層平家は不可。GLより地下7m、地上20mまで計画可能範囲)
■建築規模 延床面積 1500~2000㎡
■施設内容

     ・アクティビティ広場500~2000㎡(屋外屋内とも可)
     ・エントランスホール(適宜)
     ・観光客.市民のインフォメーションコート300㎡以上(サービス側スペース含む)
     ・メディア閲覧(適宜)
     ・イベントスペース200~300㎡(150~200人.倉庫含む)
     ・レクチャールーム100㎡×2以上
     ・カフェレストラン200㎡程度 (キッチン.食品庫含む)
     ・トイレ2カ所以上
     ・階段×2
     ・EV×1以上
     ・廊下など共用部分
     ・サービス側事務機能150㎡(倉庫含む)
     ・電気機械設備機能(建築延面積の5%とする)       
  若宮大路側敷地内にトラック駐車.搬入及び荷捌きスペースを確保し、荷物搬入動線を考慮すること。

  ゲスト、サービス側ともに動線計画を考慮すること
  鎌倉の中心となるこの場所の周辺との関係を考慮すること

日常の大きさ・カタチ・向き ○○hut

 雨や風、暑さ、寒さから逃れるシェルターが、建築の原点である。 気候の変化から身を守り、安全に居られるスペースとして、建築は存在している。 その場所(外環境)で、外部と内部の領域を分けることで、建築は成立しているのだ。 「建築を設計すること」とは「領域を決定すること」であると言い換えられるだろう。
 敷地の外部と内部の領域を計画することで、建築は大きさ・カタチを決定できる。そして、中で起きているアクティビティの 大きさ・カタチ、また、それぞれの関係・配置・バランス、外部との関係を考慮して「向き」が決まる。日常を過ごす住宅は そうやって出来ている。 この課題では、日常のアクティビティを想定し、その大きさ・カタチ・向きを計画・デザインすることで、小さくても魅力的 な住宅をつくってほしい。 またこの課題では、1/30という大きな縮尺で、人体スケール・行為(アクテビティ)の寸法・建物のディテール・部材の厚さ なども学んでほしい。

 

■敷地条件
  鎌倉市内の典型的な住宅地と想定する。 10m×10m 100㎡
  住居専用地域(防火指定無し)・建ぺい率80%・容積率100%
■建築条件
  構造自由(木造・鉄骨造・鉄板造・コンクリート造・ハイブリッド構造… )
  階数 2層以上(1層平家は不可。GLより地上10m・地下3mまで計画可能範囲)
  延床面積 50~100㎡
■設計条件
  一人もしくは夫婦2人の住空間とする。生活が成立する機能を満たしていること。(他に依存しない)            敷地内のアプローチ・ランドスケープを提案すること。周辺との関係を考慮すること。

*3年次設計演習授業

建築設計論1・同演習(春・月3−4・5セメスター)

◎吉松秀樹・佐々木龍郎・手塚由比・古見演良・篠崎弘之

Aスタジオ                                  みんなが学ぶ、街の中心としての小学校                              -架構がつないでいくフレキシブルな空間構成をつくる-

 小学校はこどもが学ぶための施設です。地方都市の田園が広がる中にも、大都市の東京の中にもこれからも変わらず必要な 施設のひとつです。こどもが学ぶための施設という本来の目的は変わらずとも、そのあり方は場所性と時代性によって変化 していくべきものです。唯一ずっと変化しないことは、こどもを守るということです。
 今回考える場所は、高級な飲食店や商業施設が建ち並ぶ表参道から数分の場所です。いわばおとなの街です。この場所でこどもだけではなく、おとなも学べる機能を取り込み、みんなが学べる場所としての小学校を考えてください。
 今の時代は、本屋さんで珈琲を片手に本を読みながら友人と会話を楽しんだり仕事の打合せをしたりと、多様性をもったフ レキシブルな場所がたくさん出来てきています。例えば昼はこどもが、夜にはおとなが、休日には家族や友人が学べる場所 としての小学校を考えてください。みんなの生活の延長線上にある、みんなが学べる小学校です。 同時にこどもを守り、みんなが集まりながら、安心して学べる計画を求めています。 学ぶという行為は、生きていく上で最も大切で重要なことです。小学校は様々な学びの基本となる場所です。多くの人が集 まるこの場所に今、街の中心となりみんながいつも集まってくる、新しいかたちの小学校を考えてください。

 学校建築はこの30年ほどの間に様変わりし、片廊下に教室が並ぶ従来型から、開放的なオープンスクール型まで、様々な学校がつくられてきた。 一方、学校を取り巻く社会環境も大きく変わり、より地域に開放された学校が求められ、生涯学習の場や子育て支援のための設備が設けられるようになった。
 学校は、社会から切り離された教育のためだけの空間ではなく、都市や地域の生活のための公共空間へと変貌している。小学校という教育のための施設を、都市や社 会の側から再考することが、この課題の目的である。
どんな空間をつくれば、子供達が生き生きと学び、遊ぶ環境と、社会や街との新しい関係が共存できるだろうか? 既存の教育プログラムや学校建築の形式にとらわれることなく、これからの日本にとって必要な、公共施設としての小学校空間を提案してほしい。

 

■敷地
 東京都港区南青山
■敷地条件
 6,800㎡(間口:約97m×奥行き:約69m)
 第1種中高層地域 建ぺい率60%(角地緩和10%) 容積率300% 準防火地域
■設計条件
 建築面積(水平投影面積):4,080㎡以下(敷地面積×60%)
 延べ面積:6,000㎡程度
 構造形式:木造・S造・RC造・SRC造など
 階数:地上2階建て
 必要諸室:下記を基準面積として提案を行うこと(提案に応じて変更してよい)
    a.普通教室  :1,152㎡(64㎡教室x18室)
    b.職員室   :128㎡ (1室/校長室含む)
    c.来客室   :32㎡ (1室)
    d.保健室      :32㎡ (1室)
    e.事務作業室    :16㎡ (1室)
    f .共用部      :2,000㎡程度(オープンスペース・廊下・階段・トイレなど)
    g.機械室      :400㎡程度(全体の7%程度確保する)
    1.音楽室       :128㎡以上
    2.理科実験室 :128㎡以上
    3.家庭科調理室:128㎡以上
    4.図画工作室 :128㎡以上
    5.図書室      :128㎡以上
    6.運動室      :384㎡以上
    7.提案機能     :1,000㎡程度

           ((上記1.~7.の機能に付加(拡張や複数など)するかまたは自由に提案))             

   *屋外運動スペースは地上面または屋上でも可とする。

    体育館やプールは各自の提案による。(設けなくてもよい)

Bスタジオ                                      人が集まる場所を公共空間ととらえる-       Minamiaoyama,Minato,Tokyo -

 都市では、公園や学校などを除きその大部分は建物が立錐している。そして建物のグラウンドに近いフロアーは大部分が商業スペースである。 「歩いていたら、都市は巨大なショッピングモールみたいだ」と言えなくもない。それだけ、商業スペースが都市では必要とされている。そして、東京では毎年のように大型の商業施設がオープンしにぎわっている。しかし、そのプログラムはどこも代わり映えせず、建築空間的な魅力は乏しい と言わざるを得ない。
 また、近年、来日外国人観光客は劇的に増え、私たちも都市へ行く機会が増えている。都市へ人が集中しつつある。だからこそこれからの都市に、人それぞれがその目的に合わせて分かりやすい施設、また来たくなる魅力的なプログラムや空間、人が集まるオープンで 広場のような場所が必要とされている。それらのことを踏まえて、都市の大部分を占めている商業スペースを「人が集まる公共空間」という視点 でとらえ直し変えていくことには意味があるだろう。それはまた「公共の意味」でも新しいカタチになる可能性がある。そこで、東京中心でありながらゆったりした街のキャラクター・コンテクストを漂わせている青山のこの場所に、今求められているこれからの公共的空間とはどのようなものか?を考えて、人が集まるためのプログラムや魅力的な空間を備えた場所を「商業施設のような公共施設」として提案してほしい。
 商業施設はプログラムにより施設の集客力が大きく影響されるが、建築の課題として、プログラムよりも空間の質を追求し、人が自然に集まるような魅力あるデザインを生み出すことを求めたい。 設計の手掛かりとして「架構」を意識してほしい。「架構」とは建築物を力学的に支えている単なる構造だけでなく、空間を生み出す仕組みや秩 序なども含まれた概念である。敷地や周辺環境が持っているスケール感やアクティビティーを感じて、この場所に、そのプログラムにふさわしい 架構」を考え、そこから魅力ある提案をしてほしい。


 架構の提案にあたって、以下の5項目を配慮すること。
 1 重力(鉛直力)や地震(水平力)に対して、建築を構成する要素(床・壁・屋根など)が

   どのように支えられているか、力の流れがイメージできること。
 2 自分にとって気持ちよい空間が架構によって生み出されていること。
 3 要求されたプログラムにフィットしているかどうか。できればプログラムによって

   要求される空間の大きさや明るさなどの違いに柔軟に対応できる組みが望ましい。
 4 光や風を取り入れるアイデアがあること。
 5 内部空間と外部空間を仕切る方法があること。

 

■敷地
 東京都港区南青山
■敷地条件
 6,800㎡(間口:約97m×奥行き:約69m)
 第1種中高層地域 建ぺい率60%(角地緩和10%) 容積率300% 準防火地域
■設計条件
 建築面積(水平投影面積):4,080㎡以下(敷地面積×60%)
 延べ面積:6,000㎡程度
 構造形式:S造・RC造・SRC造など
 階数:2~3層 地下1階まで、地上3階までを計画可能範囲とする
 用途:商業施設のような公共施設
下記を基準面積として提案を行うこと(提案に応じて変更してよい)
 ・商業スペース 面積・業態は自由 3000m2  
 ・飲食スペース ファストフード・カフェ・レストランなど 1000m2  
 ・新しいプログラムのためのスペース 内容・面積は各自(課題の重要な解答になります)  
 ・共用部、トイレ、倉庫など適宜  
 ・機械室5%程度  
 ・駐車場 敷地内にゲスト駐車場は必要ないが、搬出入の駐車・荷捌きスペースと動線を確保する
       *外部空間(面積には入れない)は、アクティビティを意識しデザインする 
   *内部空間と広場、周辺環境が連続するような計画とすること  
   *周辺の人の流れを意識し、アクセスを計画する  
   *住宅地との関係を考える  
   *敷地は、住宅地側(主道路から奥)で高低差(約1,5m)があるが、

    計画では高低差無しとしてもよい

Aスタジオ                            オリンピックミュージアム -新しい渋谷の魅力を作る-                      -Olympic Museum,Shibuya,Shibuya,TOKYO-

 2020年にオリンピックを控え、今渋谷の街は大きく変わろうとしている。渋谷駅の南側では大規模開発が同時並行で 進み、高層ビルが立ち並ぼ うとしている。一方ハチ公前広場のある北側では目立った動きは無い。そこでハチ公前広場をのぞむQフロントの敷地に新しく生まれ変わる渋谷 にふさわしいオリンピックミュージアムを設計して欲しい。Qフロントは浜野安宏氏がプロデュースし平成11年に建てられたビルである。TSUTAYA のフラッグシップストアとスターバックスが入っていて、巨大なLEDスクリーンの正面ファサードは当時としては最先端であった。今や時代は変 わった。ここに現代の時代性を持ち、かつ新しい渋谷の象徴ともなるべき建築を考えて欲しい。
 プログラムとしてはオリンピックミュージアム。 オリンピック開催前は、来たるべきオリンピックへの期待を膨らませられる場として、オリンピック開催中はオリンピックをより深く楽しむ為の 場として、そしてオリンピック開催後も常に人が集い、オリンピックやスポーツより楽しむための場となるように設計して欲しい。 計画に先立って、敷地および周辺の状況、都市的・文化的コンテクストを読み込み、渋谷が持つ都市的アクティビティを理解してほしい。都心ゆ えに敷地はプログラムの内容に比べ小さく、計画建物は垂直方向に伸びざるを得ない。必要な諸機能を垂直に、時に水平に重ねて統合し、都市的 なコンテクストを踏まえた新しい渋谷にふさわしい施設・建築空間を創造することを期待している。


計画にあたり、以下の3つの連続性を意識してほしい。
1・周辺環境との連続性。ランドスケープと建築の両方をデザインする。

  都市のコンテクスト(文脈)を読み込み、渋谷の都市アクティビティを理解する。
2・配置された諸機能の連続性。平面的・断面的な動線計画を熟慮し、施設全体が魅力的な施設とする。
3・家具デザインから構造デザインに至る思考の連続性。

  プログラムから建築のカタチを作りあげていくことを目標に、

  スケッチや図面を描いて案を練り上げる。

 

■敷地
 東京都渋谷区
■敷地面積
 784㎡:商業地域・防火地域
 容積率:900%・建ぺい率:80%(角地緩和90%)
■設計条件
 延床面積:6,000㎡前後
■構造形式:自由(S造、RC造、SRC造など)
■階数  :地下1~2層、地上8~10層程度(地上40m以上とする(最高高さ60m))
■用途  :ミュージアム
      下記を基準面積として提案を行うこと。(提案に応じて変更してよい)
     a. 情報コーナー   :300㎡
     b. 常設・企画展示  :1,800㎡  展示・体験 ・収蔵庫
     c. カフェ    :300㎡   ミュージアムカフェ
     d. ホール    :500㎡   200人、講演・作品上映・映画など・AV機能を有する
     e. ショップ   :500㎡   ミュージアムショップ・ブックショップ・倉庫
     f. 管理      :500㎡   事務、館長室、会議室
       g. 機械室      :500㎡   空調(地下または屋上)+電気(100㎡)

     h. 共用         :ロビー・ホワイエ・通路・休憩ラウンジ・階段・便所

             屋外イベントスペース等
     i. その他      :避難階段として区画された2つ以上の直通階段・客用EV(必要台数)
     +搬出入EV *駐車場は敷地外とするが、搬出入動線や駐車スペースは確保

Bスタジオ                                 シブヤパフォーミングアーツハブ                  -渋谷交差点に新しい人の動きをつくりだす -                 -Shibuya Performing Arts Hub,Shibuya,Shibuya,TOKYO-

 パフォーミングアーツ(以下PA)は演劇、舞台など、身体の行為により表現する芸術を指す言葉である。渋谷はオペラやミュージカルを観れる大規模ホールから、演劇専用の小劇場、映画館をリノベーションしたライブハウスなど(旧シネマライズ)、さまざまな規模・ジャンルが揃っていて、建築内にとどまることなく広場・街路などの外部空間まで広がっているケースもあるが、一方でそれらが渋谷の街中、建築のフロアに分散していることで、その集積が見えにくくなっている。
 そこで本課題では、渋谷交差点に面した極めて視認性が高い敷地に、PAのための空間の集合体を計画してほしい。PAは窓のない閉鎖した空間だけではなく、ガラスキューブなどの可視化された空間でも行うことができる。ファッションショーのようなリニアな空間を求められることもあれば、野外劇場など屋外空間にも展開する。また今回はPAを広く解釈し、AKBなどのアイドルイベントや、映画・映像などメディア化したPAを共有するようなプログラムまで含めて良い。そして渋谷の交差点に降り立った人々がファーストコンタクトするのに相応しい、ファサードや低層部の在り方などを構想して欲しい。
 計画に先立って、敷地および周辺の状況、都市的・文化的コンテクストを読み込み、渋谷が持つ都市的アクティビティを理解してほしい。都市的な コンテクストを踏まえた新しい渋谷にふさわしい施設・建築空間を創造することを期待している。
 
計画にあたり、以下の3つの連続性を意識してほしい。
1.周辺環境との連続性。渋谷交差点の人の流れを読み込み、都市アクティビティを理解する。
2.配置された諸機能の連続性。平面的、断面的それぞれの空間計画を熟慮し、

  施設全体が魅力的に計画する。
3.構造、動線の連続性。力の流れ、人の流れなど多層建築を成立させている技術的、計画的な連続を

  スケッチ、図面、模型を用いて案を練り上げる。


■敷地
 東京都渋谷区
■敷地面積
 784㎡:商業地域・防火地域
 容積率:900%・建ぺい率:80%(角地緩和90%)
■設計条件
 延べ面積:6,000㎡前後
■構造形式:自由(S造、RC造、SRC造など)
■階数  :地下1~2層、地上8~10層程度(地上40m以上とする(最高高さ60m))
■用途  :イベントホール
      下記を基準面積として提案を行うこと。(提案に応じて変更してよい)
     a.インフォメーション:300㎡
     b.イベントスペース   :2500㎡ :

      規模・特徴の異なるイベントスペースを「最低10タイプ」計画すること。
     c.カフェ      :300㎡
     d.ショップ   :300㎡ :メディアショップ・倉庫
     e.管理         :500㎡ :事務、研究室、会議室など
     f. 機械室      :500㎡ :空調(地下または屋上)+電気(100㎡)
     g.共用         :ロビー・ホワイエ・倉庫・通路・休憩ラウンジ・

            階段・便所・屋外イベントスペース等
     *避難階段として区画された2つ以上の直通階段及びEVは必要。
      演者の動線と、観者の動線それぞれと、その関係を計画すること。
     *1400㎜幅の階段を1箇所は作ること。
     *搬出入口は西武A館に隣接する一角とし専用EVを設ける。駐車場は設けなくて良い。
      搬出入は原則夜間、人通りのない時間帯に行う。

建築設計論2・同演習(春・月3−4・6セメスター)

◎杉本洋文・上田至一・長谷川祥久

「平塚市民ホールの建替えを題材とした複合交流拠点の提案」

 平塚市は、首都50キロ圏にあたる神奈川県のほぼ中央南部に位置する商・工・農業の均衡のとれた複合都市で、東京から東海道本線を西下し、約65分のところに位置する。遠く江戸時代には東海道五十三次の宿駅として問屋場・見附本陣・脇本陣があり旅籠屋も多く交通・商業の拠点として栄えた街である。 現在の中心市街地は戦災(平塚大空襲:市域の戸数の約7割が焼失)を経て、JR平塚駅を中心とした戦災復興土地区画整理事業により商業地が形成され、昭和30年代の最盛期には商圏人口60万人と推定されるほどの商業力を誇り、藤沢、小田原、伊勢原、厚木等を商圏とする中心商業核をなしていた。しかしながら、昭和40年代後半以降、商業施設の老朽化、モータリゼーションの進展、周辺都市の商業集積の充実などにより、年々停滞色を強め中心部の商業 は低下が進むようになった。その後、アーケード整備やモール化等が実施され、商業の建て直しが図られたが、近年の社会経済情勢の変化がスピードを進めてきたことから、商業の低下に伴う中心市街地の空洞化が進み、店舗が撤退した跡地には駐車場や高層マンションの立地が目立つようになってきている。 見附台周辺地区はJR平塚駅から徒歩5分に位置する中心市街地に近接した約2.5haの公共用地であり、かつては平塚市役所や見附台体育館などの公共施設が位置した行政の中心地であった。現在は市役所や体育館は移設されており、市民センター、崇然公民館、見附台公園、見附台広場、2つの市営駐車場及び 2カ所の緑地が位置し、中心市街地に近接する市民の憩いの場として緑豊かな空間を形成している。ただし、これらの公共施設は老朽化が著しく、多様な市民サービスに応えきれない等の問題を抱えている。とりわけ平塚市の文化・芸術の拠点として、昭和37年に建てられた約1,400席の多目的ホールである市民センターは、現行法規における耐震性能を満たしておらず、地震で倒壊する可能性が高い部分があることから、平成27年より使用を停止している状況にある。平塚市では、マスタープランにおいて見附台周辺地区を「新たな賑わいの拠点として再整備」することとしており、地域の活性化の起爆剤としての期待の高まりから、公共施設の更新について長らく検討が進められてきた。 平成15年度に「中心市街地(平塚駅西口・見附台周辺地区)まちづくり計画」、平成18年度に「見附台周辺地区土地利用基本構想」、平成20年度に「見附台周辺地区土地利用基本計画」、平成24年度に「見附台周辺地区土地利用基本計画-整備方針-」、平成28年度に「見附台周辺地区土地利用基本計画-改訂整備方針-(以下、改訂整備方針という)」を策定し、土地利用の基本方針や事業の実現方策として公共施設更新に係る財政支出縮減のため「公的不動産(PRE)の有効活用等の民間提案型PPP事業」による推進を定めており、平成29年度に土地利用、事業手法の検証作業と実施方針の策定、平成30年度に整 備事業者の募集と決定、平成33年度に供用開始(目標)することとしている。
 これらの状況を鑑み、建築設計論2・同演習の第1課題は、改訂整備方針を踏まえた、市民センターの建替え、見附台公園の再整備及び商業施設の導入とする。改訂整備方針において、建替え対象となる市民センター((仮称)新文化センター)は、「大ホールを中心として、コンパクトで使いやすさに配慮し、子供や若者を始めとして、幅広い年齢層を対象とした文化芸術活動の支援、賑わいを創出するスペースなどの機能や設備を備え、優れた芸術鑑賞機会や活動発表の場の提供、活動団体の支援や育成など、市民が誇れる芸術文化施設を目指します。」とされている。また、見附台公園については「現有規模(7,293㎡)を確保し、近隣公園としての機能整備を図ります。」とされている。 また、「公的不動産(PRE)の有効活用等の民間提案型PPP事業」の実施により、地区の一定程度の敷地が民間収益施設として、商業施設用地となることが想定される。「新たな賑わいの拠点として再整備」の実現に向けて、平塚駅に至近の中心市街地に近接するという立地特性を活かし、誰もが気軽に集い、憩い、学び、賑わいある複合交流拠点となるよう、各施設の機能がスムーズに連携できる土地利用を検討するとともに、市民活動等の発表の場や商業イベントとしての公園 活用、ホールを広場に開放したホールと広場の一体活用、広場に面して商業の顔を設置した広場の賑わい形成、市民団体の練習の場としての商業施設活用等、施設が互いに連関し相乗効果が発揮出来るような土地利用と施設計画を提案して欲しい。

 

■敷地   神奈川県平塚市見附町
■敷地面積 24,854㎡
■用途地域 商業地域
      建ぺい率80%、容積率400%
     (旧東海道沿い道路境界から30ⅿの範囲は建ぺい率80%、容積率500%)
      防火地域、第4種高度地区(最高高さ31ⅿ)、駐車場整備地区
■計画条件 延床面積を10,000㎡程度とし、以下の機能を確保する。  
  ・ホール機能:1,000席・ホワイエ・バックヤード(楽屋・搬入口・荷裁き等)  
  ・展示機能:展示室・展示準備室  
  ・創造支援機能:大中小スタジオ・ワークショップスペース・和室  
  ・交流機能:オープンロビー・レストラン・カフェ・ライブラリー・会議室  
  ・管理機能:管理事務室・楽屋事務室  
  ・その他:トイレ・倉庫・機械室・駐車場(5台:管理者用)
 ○見附台公園
  ・公園の態様は自由提案とする(新たな複合拠点に相応しい態様を提案すること)
 ○民間収益施設
  ・民間収益施設は商業施設とし、上3階以下で延床面積10,000㎡程度を確保する
  ・民間収益施設の位置は、旧東海道から見通しが利く位置とする
  ・商業施設の業態は自由提案とする(新たな複合拠点に相応しい業態を提案すること)
■その他
 ・見附台公園は7,293㎡以上確保する。
 ・敷地には民間収益施設用地を7,500㎡程度確保する。
 ・見附台緑地のクスノキは保存する。
 ・見附町駐車場には崇然公民館と市民活動センターの複合公共施設が整備される。
 ・錦町駐車場は市民ホールや民間収益施設の来客用駐車場として活用できる。

「横浜の都市景観をつくる都市木造の提案」

 日本は豊富な森林資源を保有しており、古来より木の文化を育んできた。近代社会は、鉄とコンクリートが主流の建築となり、都市の中に木造建築の公共施 設は建ててこなかった。一方、欧米は、中大規模木造建築の研究や技術開発が盛んに行われ、中層の都市木造が建設されている。 日本は、2010年に「木材利用促進法」が施行され、都市木造の研究が取り組みまれ、やっと都市木造の研究や技術開発が行われるようになった。
 この課題では、日本の豊富な森林資源を活用した都市木造の建築の提案とする。計画する都市は、横浜市の伊勢佐木通り、馬車道通り、さらに港まで続く 横浜のメインストリートを対象とする。敷地は現地のデザインサーベイを行って、横浜市の新たな都市景観を形成する都市木造を提案してもらう。
 提案する施設は、低層部に横浜の立地にあわせた商業施設・コミュニティ施設等を取り入れ、上層部は多様な家族が住まう集合住宅とした中層(高さ31m)の都市木造の提案を求める。

 

□敷地及び敷地周辺条件
 敷地場所:各自、通りをデザインサーベイしてメインストリートに面した敷地を選定する
 敷地面積:約1,000m2
 用途地域:商業地域
 容積率/建蔽率:600%/80%
 最高高さ:31m以下地上7階程度
□計画条件
 建築用途:1階・2階は商業施設・コミュティ施設など立地に合わせたプログラムを提案する。
      3階以上は多様な家族が住まう、集合住宅(3タイプ以上)を提案すること。
 主要構造:木造を主体とする